牛丼配達の日

吉野家牛丼配達委員長に任命された渡の初仕事日です。
仕事内容は、お姉ちゃんが夏の集中学習に通う日本人学校の職員室と、お姉ちゃんのクラスに購入した牛丼を運ぶこと。
渡の担当は、10コの牛丼を運ぶこと。10という数は数えやすいので。
まずお店について、
「私が注文する間、静かに待つ・・・・」なんてことは、できないので、注文の数だけの紅しょうがの容器をつくります。これは、紅しょうが持ち帰れるように、小さい容器がおいてあるので、それを並べて、そこに小さいトングで紅しょうがをつかんで、いれてゆきます。自閉の渡を待たせるコツは、小さいのでも、なんでもいいので、仕事を与えることなので、お願いしたら、
「嫌。NO!」
と言いながら、紅しょうがを容器にいれてゆきます。
いつものことですが、渡は初めての仕事は苦手で、最初は軽いパニックを起こします。ここであきらめずに、褒め倒しながら、お願いしてゆくと、結構きちんとやってくれます。すべての容器にしょうがをいれて、一個、一個ふたをすると牛丼のお姉さんが
「できたよ〜」
と声をかけてくれて、これを保温バックにいれます。
さて、渡は、自分の担当の分を保温バックにいれて、かついでクルマまで。これは、職員室に運ぶ分です。
クルマに乗り込み、学校に到着。3.78リッターの麦茶が入った容器(1ガロンです)と10個の牛丼を持ち、駐車場から、おっちら、えっちら、運びます。渡には、職員室に入る時は、
「失礼します」
出るときは
「失礼しました」
と言ってお辞儀をすることを教えましたが、日本語が苦手な渡。入るときに
「失礼しました!」
と言って入ってゆきます。入ると看護の先生が
「あっ〜!渡ちゃん、ここに牛丼おいてくれる?」
と言われて、嬉々として牛丼と、麦茶とそのコップをおいています。いつもなら、用事もないのに、職員室に乱入して
「ママはどこ?」などと聞かれるのですが、今日は、お礼まで言われて、褒められてしまいました。これは、渡もうれしい。
にっこりして、職員室から出るときにお辞儀をして
「失礼します!」
と元気よくあいさつ。ちがうって!あいさつが逆だって!褒められた渡は、今度はスキップして、お姉ちゃんが勉強しているクラスまでゆきます。
まだ授業をやっているのですが、褒められた渡はうれしくて仕方がない。渡は、うれしいと歌うクセがあるので、大きな声で歌を歌い始めました。授業中にクラスに響きわたるので、あわててはなれた場所につれてゆきました。
ベルがなり、香穂や友だちがでてきたので、渡は皆に牛丼を渡して、
お仕事終了。香穂にお礼を言われて、大喜びです。香穂に
「歌、聞こえた?」というと、
「えっ?なに?皆、渡を知ってるから、大丈夫だよ」
だって。すごいな。さて、木曜日も配達です。