ルームメイトがいなくなってそして・・

香穂のルームメイトがご家族の事情で休学し、実家にもどって、4日が経ちました。
2人部屋でひとりぼっちの香穂。
ちょっと心配で連絡したものの、携帯を取らない。

「まっ、なにかあれば、あの大学は親切なので、連絡してくるだろう」
と思ってほおっておいたら、携帯の留守電に数日後に気がついたようで、もうしわけなさそうな声で、
「あっ。電話くれた?」
というので、
「したした。別に用事はなかったんだけど、1人で部屋にいるとどうかな?とおもってさ」
というと。
「それがさー。私、自分の部屋で勉強してるんだよ・・。すごいんだよ。静かなんだ」


普通の家では子供の自室が静かで勉強できる環境というのは、当たり前の事かもしれませんが、2歳半から自閉症児の渡とつきあってきた香穂は自室で勉強をしたことがありません。
というのも脱走する渡を見ながら、あやしながら勉強していたわけで、リビングで渡のおもりをしながら宿題や公文をやっていた訳です。私もこれはいけないと思い。何度も部屋に戻そうとしたのですが。
「これが日常なんだから、いまさら、無理に部屋に行って勉強しろって言われても、いろいろ気になって集中できない。」
というのが香穂の弁だったので、
それ以上はうるさくいっておりませんでした。


香穂が中学の頃は渡が小学生でわりと大変な頃で、香穂は宿題は家ですることをあきらめて、休み時間に図書館でやってたそうだ。私はそんなことは、しらなかったので、
「香穂の中学は宿題が全くでなくてラクチン」と思っておりました。
たぶん、ルームメイトが出て行って、生まれて初めて静かな勉強できる自室っていうのをもらったのでしょう。
「静かってすごいね。予習とか出来ちゃうんだよ。すごいよ」
と言っておりました。
「ちょぅと寂しいけど、仕方ないよね。すーっとにぎやかだったしな。
こういこともあるよね。」と言っております。

大学に入ってからは、ルームメイトが映画製作学科だったこともあり、室内に音が常にある感じだったのですが、香穂は渡のノイズになれていたので別段気にせず、集中したい時は図書館にいっていたそうです。

「じゃ、成績があがるんじゃないの?苦手な宗教の授業もうまくいくとか?」と言うと
「そりゃ別の話だ。自分の部屋が静かになったからっていって、宗教の授業が得意になる訳じゃないからさ」
と言われてしまった。
ごもっとも。

すこしづつ人との別れを受け入れられるようになって来た香穂です。