自閉症の渡とオペラを観に行く

渡とオペラを観に行ってきました。
見たオペラはこれです。

オペラのハイライトシーンだけをやってくれるので、暇しませんし、ほとんどの人が知ってる曲です。

実は渡は、数日前にこの予行演習をひょんなことから3秒ほど見ました。
衣装を来てリハーサルをしていたので、もりあがってしまい。
自分もおめかしして行くといいます。なんだか、オペラを聞くというのが主目的ではないようです。ナンパ主目的ですね。
彼のナンパのゴールは、挨拶ができ、握手ができて、一緒に写真がとれればナンパ大成功です。けど、これはこれでなかなか大変。初めて会った人にここまでする訳ですから。さらに彼は自由には話せないわけで・・。普通に自由に話す高校生の男の子でも、全然知らない人に挨拶して握手して写真とってきて!っていうのは、ハードルは高いと思う。それを自閉症の渡がやる訳で。
どうなることか?と思った一日のスタートです。

とりあえず、朝から散髪です。ナンパの為に散髪までするところが渡らしい。努力家です(笑)
それから、夕方になりスーツに着替えて車に乗り込みました。現地に到着したものの、腹が減ってはナンパができぬ戦ができぬ、だそうで、勝ち抜くためにもまずは腹ごしらえ。
大好きなピザとポテトを頂きます。

おそろしくおおきなピザ。メニューの上に10セントコインをおいてありますが、顔がうまりそうな大きさです。
好きなものがたべれて、嬉しい渡。

さて、お腹が一杯になった渡はいざ会場へ。

開演までホールの隅っこで、DVDを見ながら時間をつぶしました。
待ちに待った開演時間がやってきました。ホールに入った私と渡。

一曲目は蝶々夫人。綺麗な着物がでてきます。渡はちょっと喜んでおりました。けど、着物より洋服がいいような感じの彼です。
このままオペラが進むのか?とおもいきや次はバリトン担当の男性。一気に興味が失せてしまい。けど、次に女性がでるのを知ってるので、帰るとは言わない。興味が失せた事を態度で示します。突然背もたれにしっかりもたれて、パンフレットを見始めた。男性オペラ歌手には、興味がないらしい。
こんな感じで女性が歌うとしっかり見て、男性が歌うとパンフを見るというのが続きました。
そうこうしているうちに、渡はダイアンさんというソプラノの方がお気に入りなのが私にもわかって来た。なぜわかったか?というと、彼女が歌うと体を前にのりだして、ぽかーーーんと口をあけて、微動だにせずオペラに聞き入ります。
オペラはどんどんすすみ、

"カルメンや、"Quando M'en Vo"(La Boheme), Liniamo(La Traviata)等々もでてきて終わりました。

会場は、スタンディングオベイです。渡も立ち上がり言った言葉が最高。
"ブラボー”
と言いながら拍手しています。どこで覚えたんだか、そんな言葉。笑ってしまいました。

レセプションがあるのでとなりのお部屋へとなりました。歌手の方たちを囲んでワインを飲みます。渡は必死で
「写真を撮る、写真を撮る。」
と言いはりますが、大勢の人たちに囲まれた歌手の方に、言語が不自由な渡が近寄れるチャスはほとんどないように見えます。そんな中でも渡はきちんとお目当てのダイアンさんを見つけました。

渡は輪の一番外側でじーっとじーっと待ち続けます。無理だってば。と思う私。
けどそうこうしているうちに、輪の間に隙間ができた。突然その隙間を狙って、渡が駆け寄り
「一緒に写真をとってほしい」
と言いだしました。ところが、会場はすごーーくうるさいので声のボリューム調整ができない渡の声が彼女に届かない。相手も意味がわからず。ところが渡がまけじと挨拶すると挨拶は聞こえて、ダイアンさんも挨拶をしてくれた!その瞬間に手を差し出す渡。すごい!ナンパは途中まで成功です。渡は再度声にだして写真を一緒に撮って欲しいと言ったのですが、声が小さくて聞こえない。周りがうるさいのです。私の声も通らない。ダイアンさんが私のほうをみたので、私がカメラを構えるとすぐに理解してくださってにっこと笑って写真を取ってくださいました。
思いっきり顔をよせてくださったダイアンさん。
渡は緊張しまくり。耳まで真っ赤にして喜んでいます。

笑顔をつくろうとする渡。緊張のあまり硬直しています。

無事に写真がとれて、ナンパ成功!

「バイバイ」
と挨拶した渡は帰ろう攻撃です。

なんとまぁ、正直な。いろんな意味で楽しんだオペラでした。