自閉症児の大学数学への挑戦と数学の王様

渡が受けている大学数学のクラス。最高に難しい部分に入ってきました。
渡の数学の解らない部分を教える担当をしている開発リーダーは

ほほぉ。難関大学の受験数学になってきましたね。違いと言えば、日本の数学は、わりと綺麗に答えが丸まるので、なんとなく合っているな。と解るのですが、アメリカはそれがないので、なかなか大変ですね。

冷静。
私は、心配になり、

渡は自閉症なんだよ。知的障害もあるんだよ!!こんなのできるのかなぁ?

と思わず訴えた。開発リーダーは、

大丈夫。自閉症ですから。 渡君は、勉強をするという癖がついてきていますし、知りたい事には、食らいついてきます。さらにあきらめませんから、後はこちらが、解る様に説明すればいいだけですから。

そういう風に自閉症固執する特徴を使う訳ねー。すごい!!
ということで取りかかった数学。開始時間は、午後3時。終わったのは午後10時を回っていました。計算、複雑過ぎ。
夕飯の時間以外はカリカリとやっていました。
けど、途中、余りに解けなくて、だんだん悲しくなって来た渡。悲しくなるとさらに悲しい事を想像してしまう。
まるでパンドラの箱の悲しい部分だけを取り出したかのように悲しくなる。
そうなるといろいろとネガティブなことを考えだす。
渡がすごく心配し始めたのは、このままでは"Math King"の称号がなくなってしまう。ということ。過去にもらった数学の王様のバッチ(詳しい事は→完全復活する渡
これですね。

このまま数学ができなければ、このバッチの返納をしなければならないのでは?という心配です。
これがなければ、クリスマスにディズニーランドのお姫様に会っても、自慢するものがない..報告ができない..と思っている。
泣きそうな顔で、

難しすぎる。

といいながら、それでも鉛筆を離さない。
私は、ただただ困った。そんな事、思いもしなかった。私的には、一回もらったら、それは自分の物だし。だけど確かにここで、

そんな事はないよ。渡は数学の王様だよ。

と言ったところで、それは違うというのは当人が一番感じているから、嘘はつけない。かと言って、

あなたは、今度の数学でいい点数を取らないと、数学の王様じゃない。

とか、そんな思ってもいない鬼のようなことを言えない。それは私が願う
「渡のペースで数学をする。」のとはまた違うし。
オロオロしていると、別室でごそごそしていた香穂が出てきた。

渡。渡は頑張ってるよ。王様っていうのは、すぐになれるものじゃないしね。
じゃ、このバッチを今日の勉強が終わったらあげるから、最後まで落ち着いてがんばれる?

お姉ちゃんが作ってくれたバッチはこれ。

僕は、数学の王様になるため、修行中です。

これはすごい!一気に笑顔になる渡。自分を取り戻して集中して、今日の勉強部分を終えました。
開発リーダーも

いやーこれは、ハードですね。アメリカの数学が簡単だというのも高校までです。大学はやはり大学ですね。今回のテストって何人が通るんでしょうか?楽しみですね。

と淡々としている。
けど、笑顔で今日の部分は終えて、修行バッチをもらった渡は

明日も勉強する。

と大張り切り。
よかったねぇ。けど難しいわー。渡のクラスメイトもみんな今頃かりかりと勉強してるんだろうなー。みんなが合格すればいいなーと思った深々と冷え込む夜でした。