渡の悪事〜ピザ編〜

渡が6歳の頃の話です。渡は大人の美人女性には、とても親しみを湧かせて近づいてゆきますが、小さい子供には、イマイチ興味がない。私は、お友達ができないのではないか?と心配していました。

ところが・・。日本から、2歳の女の子を連れた私の友達がやってきました。彼女のお子さんは、言葉も話す上に、美人です。いつも女の子らしい服を着て、{かわいい}という表現がぴったりの子供さんでした。
久しぶりの再会に、私と友達は喜び合って、それから、その子とそのお母さん、渡と私の4人で、ピザやパンを食べさせてくれるお店にゆきました。

その店はセルフサービスで、オーダーして、呼ばれたら、注文したものを自分で窓口にとりにゆくしくみです。
私の友達はパンを、私は、渡はパンが苦手なので、ピザを注文しました。

番号が呼ばれ、私達は、窓口で、食べ物を受け取って席につきました。
なんか、ソワソワと落ち着かない渡です。いつもとちがい、やたら{ご機嫌}なのです。

その2歳の女の子に、自分の本は、貸してあげる、手はつなぐと、なんとなく、彼女のご機嫌を取る渡。普段は人に本を貸さないし、手をつなぐのは、苦手です。私は、心の中で、
「渡!惚れちゃったんだなぁ。。」
と感動してました。

しばらくすると、その子供さんが、アメリカのパンは、どうも自分が食べていた日本のパンとちがったみたいで、渡のピザをほしがったのです。渡は、お皿ごと彼女にあげました。
彼女はピザが気にいったようで、パクパクと食べ始めたのです。渡はその光景をニコニコと笑ってみていました。
もうピザには、手もだしません。ただニコニコと彼女の前にある減ってゆくピザの皿を眺めています。

「重症の片思いだな・・」
とおもった私。

すると渡がスックと立ち上がり、店内のどこかに走り去ってしまった。
友だちが、
「渡ちゃんのピザ、うちの子が食べちゃったから、怒って席を立っちゃたんじゃない?」
と心配顔です。
私は、渡は多動なので、こうやって立ち上がって、どこかにゆくことはよくあると友達に説明し、
渡を探しましたが、見当たらない。店内のどの席をみても見当たらないのです。

えっ?店の外?と思い、外を探そうと思ったら、しばらくして、渡がピザをもって、ダッシュで走って、女の子の席に戻ってきた!
もう満べんの笑みです。
彼女がうれしそうにピザを食べてるのをみた渡は、もっと彼女を喜ばせたいとおもったらしく、
オーダーがでてくる窓口の下に潜んで待ち、ピザがでてくると、我が物顔で彼女のためにピザを万引きしてきたわけです。
慌ててお店の人に事情を説明し、返品した私。店の人は、爆笑して、
「うちのダンナも、彼にしつけてもらいたいんだけど・。。。うちのダンナ、私に、なにもくれないわよ。あんたは、えらい!」
と渡に言ってました。
私は、
「渡って、将来はみつぐ君になるんだろうな」とおもった日でした。