娘の絵の授業
娘は絵画の授業を大学で取っていますが、絵を描く事を学ぶだけじゃないのが、アメリカの大学。なんと、9回かけて地元の特別支援高校の子供達に絵をかくということを教えるというのをやるらしい。
最初の2時間はまずは障害の勉強。クラスには、発達障害をみたことがないという留学生もいたりするそう。他には、ずっとお嬢様の私立で高校まで学び、特別支援の子供達には会った事がない子とか。まずは、自分たちが、今回の高校との合同授業をどう思っているかをみんなで討議。
見た事がないという子供達は
だって普通じゃないしぃ。
とか
えっー何するかわからないし。怖くないですか?大丈夫ですか?
とか、そういう意見があったそう。香穂はここの時点でプチン。
普通じゃないってどういうこと?普通の定義は?私の弟やその友達からみたら、私達のほうが普通じゃないんだよ。嘘ついたり、向き合わなかったりするじゃない?
と鼻息荒く発言して、教授にたしなめられたりもしたそう。
教授は自分たちが担当する9名の子供達の情報を紹介してくれたそう。
たとえば、
香穂は、スターウォーズが好きなのかぁ。止まらないのかー。数学が好きなのか。開発リーダー...どっかで見た事あるなぁ。と思ったりしたそう。
Bさん
目が見えない。知的障害が軽く、聞く力はすばらしく発達してる。
このように紹介されていくそう。
これらの子供達に1〜2人の大学生が付き添い、絵を学びます。
教授は香穂が自閉症の弟がいることを知っているので、香穂が思った事は、間違いなく、一番先生たちが大変だなと思う生徒をあてがってくるな、と思ったそう。香穂が
ズボンの中に手を入れる子はいますか?
と聞いたら一人の女の子がパニック寸前に。彼女は、すごく潔癖性で汚れるのとかが苦手らしい。
先生それは、困ります。そんな生徒...。
という彼女に香穂は
えっーー。そんなの普通だよぉ。うちの弟もよくやるよ。
とにっこり笑ったら彼女の顔は青ざめていたらしい。
香穂曰く、やはり小さい時からのインクルージョンは大事だし、それが欠落してると人間的にも思考の幅が狭くなるんじゃないかな?と。
けど、一人の僻地の国から留学で来ている男の子は、またこれはこれですごいらしい。まず先進国の文化に慣れるのも大変なんだろうけど、人間が素直だと言う娘の意見。
彼の意見は
先生!僕はすごく楽しみです。僕はたしかに障がいと呼ばれる人に会った事がありません。けど、あったことがない人たちと一緒に授業ができるって、人間の幅が広がるじゃないですか?学ぶ事が多いです。すごいチャンスです。僕はこのプログラムをとても楽しみにしています。こんなチャンスを下さってありがとう。
ということを言うそう。
私は
「ちょっとなんだか、優等生すぎないか?」
と聞いたら、
いやー、違うんだって、マジで純粋でポジティブなの。いつもこんな感じで、困っている子がいてもすごくポジティブに考えて、意見を言うのよ。いいのよ。こういう子が居た方が。
へー。すご。
事前に発達障害の映画を見たり、各障がいを学んだりして、さて、当日。香穂の想像通り、香穂が担当になった子は、口頭言語が全く駄目な子で、なんと絵を描いても、とにかく丸でぐるぐると塗るしかできない。色もこだわりがあり、一色しか使わない。
やっぱな、と思った香穂は、少しづつ他の色も見せながらYesかNoかで答える質問を投げかけていったそう。そうするとその子は、クビを縦に振ったり横に振ったりで、ちらちらと香穂がする事を見ていたそうだ。
高校の担任の先生からは
「えっー香穂、すごい。この子。なかなかyes もNoも慣れた人にしか言わないし、初めてあった人に自分の意思を伝えるなんてないのよ。」
と言われたそう。
さて、みんな担当の子供達とも会い、教室でまずは慣れるところからやり、絵も少しづつ描いて大学に戻ってきました。ここで終わらないのが、アメリカの大学。ここから今度は
自分の担当の子供とこれから数ヶ月、何を目標にし、何を学ぶのか?それはどのような方法で行うのか?彼女や彼等のベネフィットはなにか?
などなど、授業計画(というよりまるで投資家に聞かせる厳しいビジネスプランだ。)を立てて、提出せねばなりなせん。一緒に遊べるのも最初の2時間ほど。その間に彼等からしっかり信頼を得て、授業をすすめて行くのが目標のようです。
大学 へもどるとみんな緊張していたので、へろへろに疲れていたそうだ。ぐったりっていう感じだったそう。香穂だけは、古巣にもどったようで、もうニコニコだったそうです。
電話で話してても、
「いやーきのう一日、なんだか嬉しくてさぁ。ニコニコしてて、そのまま舞台の練習に行ったもんだから、教授達から香穂、あんた今日、いいことあったでしょう?」と聞かれた、そうだ。
それで電話してきたのは何か?というと。彼女の授業プランについての質問でした。
一色の色で丸しかかけない描けない彼の才能を引き出すには、丸を使ってできること。たとえば、丸く紙の上に塗ってこの紙をはがすとまた白い丸が出てくる(なんだか絵が苦手な私には、非常に説明がわかりにくかった..)そこに他のものを描くというのだと、丸がある分、彼は安心するんじゃないかな?
丸がかけるというのは描けなかった時から見たら彼は成長してるんだよ。だからねー。丸ばっかりかいてたら駄目だとか、他のことをしようとか、そんな人の成長を塞ぐ事だけはしたくない。今度は丸を使うと楽しいよ。っていうのを一緒にやってみたいんだー。
という彼女のプラン。熱く語ってくれます。目標や、ベネフィットなども明確になりつつあるそう。
いやーそれ、ちゃんとした授業プランだから、それでいけばいいじゃん。私に電話して質問する事なんてなにもないじゃん。
というと、
私が聞きたかったのは、親から見た時の話。たとえば、その彼の親が、一緒に描いた絵をみて、Pepperdineの子がきても所詮丸しかかかないのよ。たいして変わらない。と思われるのはいやだ。
との事。いやーそんな事はないだろう。
それだとちょっと親が成長しないといけないんじゃないか?さらに人がこう思う、ああ思うなんて人の感受性の部分をコントロールしようとすると人生がとてもつまらなくなるからやめな。フォーカスは担当の子だよ。という私の意見を伝えました。授業をうけてるのは、その彼であって親じゃないから、その子が少しでものびて、少しでも楽しいと思えば、しめたもんさ。
と。
これから週に1回まるでホームグラウンドにもどったかのような時間を過ごす香穂でしょう。
最後に高校の先生達がわいわいと、雑談していて、
「私、来週IEP3つもあるのよ。もう死にそう」
とか話してて、香穂は
「あぁ。IEPは大変ですよねー。」
と答えたら、先生から驚かれたそう。IEP知ってるのと言われたので、えぇ。何度も手伝ってますと。
そりゃそうだろう。普通の兄弟でも弟のIEP の手伝いをする子は少ないけど、うちの場合、香穂がIEPのゴール設定が死ぬほどうまいことと、やっぱ香穂のほうが現役学生なので、すごく現実味があるゴールを設定するので、いつも手伝ってもらってました。大学にいってからも夏休みの時はいつもゴール設定のことをしていたので、言語療法士に
「あんた、絶対に子供のゴール設定をする職業に着いた方がいいよ。あなたの設定するゴールは、すごく斬新なんだけど、絶対に必要なもので、すごく現実味を帯びてるから。」と言われたほど。
まー楽しい授業があってよかったねぇ。と思う私です。