アメリカの芸術大学に通う娘からのすごいニュース
娘のファイナル(学期末試験)が終わりました。最終日の朝、いつものように5時半に起きて駅に私の運転で向かいます。駅まで向かう車の中で私達は、いろいろな話しをします。
彼女は現在大学院生ですが、大学時代からの学部を完全に変更したため、足りない単位を学部で取ってます。娘と3年半通う大学についていろいろ話していました。
芸術大学なので、変わってるなーと思った事は2つ。
まずひとつは、教授が自分が教えているクラスの生徒2名のよくできた作品2つを学部長を通して、学長に送られる事。学長はそれらをみて、余りパフォーマンスがよくない教授などに対しては、それなりの処置がでるということ。大学の質をあげるため、学長も必死です。教授は、最悪、首が飛ぶ事もあるので、必死で学生に教えます。これらの厳しい制度が大学教育の質をあげていくひとつの要因になっていることは明らか。
娘は
だからさー。教授も必死で教えるわけだ。生徒もさ。世界中から描ける人間が集まるこの大学で、少しでも息を抜いたら、落ちて行く事はわかってるので、必死さ。それがいい感じに作用している。
と笑ってました。すげー。怖すぎる。ところが、香穂は、この大学長に見せられる中に2教科での作品がすでに入っています。
この大学の2つ目の変わっているところは、スプリングショーです。
学生が目指すところは、教室で学長に見せる中に選ばれるのもそうですが、このスプリングショーというものは、おおきな登竜門です。香穂の大学の学部から数名ほどが大学主催のスプリングショーというショーに作品を出す事ができます。教授が選出し、選ばれた作品を教授会にかけ、残ったものがスプリングショーに出されて、大学の宣伝などに使われて、どんどんと絵が多くの人に目に付いていきます。スプリングショーは多くの企業が注目している為、大勢の人がやってきて、即戦力となる学生を探して行きます。
この2つ目のスプリングショー。私としては、
えっー!じゃ、スプリグショーに出れれば、安泰じゃない!!選ばれればいいじゃん!!
と簡単に言うと娘からは、眉間にしわを寄せながら、
あのさー、スプリングショーは全員が目指している訳だ。さらに、私なんかよりもすでに企業で実績をあげている人たちもいて、「ちょっとここの部分だけ勉強したいから大学に来る」と言う人もいたりして、半端なく上手いんだよ。大学院なんて、ほとんどの人がすでに社会で実績をあげてると思う、私が一番年下だよ。なのでスプリングショーに出れる訳ないじゃん!さらにね。企業が求めるテーストと自分のテーストが常に同じとは限らない。けどね。頑張って描き続けていれば、やりがいはあるし、なにかは起こんじゃないか?と思うけどね。今は、とにかく邪心なく、技術を磨かないと。
えっー!!地道。それ、私、無理かも。とにかく、何年も何年も描き続ける訳だ。香穂も大学院に入った時から、いつみても描いてる。スターバックスに休憩で行っているのに、それでもまだスターバックスのカップフォルダーにまで絵を描いてるし。詳しい事はこちら→我が家の米大学生
ありえん..。休憩時間じゃないのか??
大丈夫か?というくらい描きます。
そんな彼女から最終日の連絡は、珍しく興奮したものでした。
あのさー。私の縁日の絵。スプリングショーに出す候補に選ばれた!!!
えっーーーーーー!!!
そりゃ、すごいわ。
縁日の絵とは、これ。
これはストーリーを構成して、先生に6枚の絵でストーリーをつくったものを見せます。
左から右へとアメリカの本の読み方と同じ様にストーリーが流れます。
このクラスは、香穂がすごく苦戦したもので、下書きの6枚を何度も何度も提出しても教授が
あっ、Kaho.これ、駄目。こっちのはいいんだけどねー。けど、このいい方の絵も光の加減考えて。で、駄目なほうは、描きなおして。
と言われて何度何度もつっかえされたもの。同じクラスで、もっと単純なストーリーや絵の構成の子もいて、その子達は簡単に通ったのに、香穂だけ通らないので、もう辛かったそう。先生にも
先生、どこかで通してもらわないと。私、ファイナルできないんですけど。
と訴えると、先生曰く。
あぁ、そうだねぇ...。ファイナルできないのは、知ってるけどさー。君はもっと描けるって言う事、僕は知ってるから、O.K.は出せないんだよね。
と言われて、まったくO.Kが出ない。焦る娘。けど、描き続けるしかないので、何度も何枚も何枚も描き続けていました。
ファイナルぎりぎりにやっとO.K.がでたけど、最後の一枚に対しては、
香穂、この一枚は僕はもうなにも言わない。けどこの絵は駄目だ。自分の頭で考えて、最高のものをファイナルでだしてくれ。その時に見るから。
香穂、真っ青。自分だけクラスで最後まで下書きのO.Kが出ないまま、ファイナル突入です。
けど、
描くしかないよね。
と描き続けていました。
6コマでできてる絵のストーリーは、
猫又という妖怪が、夜店を見ています。そこに2人の男の子と女の子が提灯をもって、夜店を神社に出ている夜店を歩いています。恐がり、おののく夜店の人たち。神社の参道で2人を待ち構える猫又。2人は実は後ろに多くのものをつれて階段を上がっていて、それらと岩の上で御月見をします。それらは、なんと妖怪。多くの妖怪をつれて御月見をする子供2人。
というストーリー。
ストーリーは香穂的には、
「非常に深いんだよ。まぁ、見る人によるけど、私が言いたい事はこのストーリーの奥底にある。」
そうです。
最後の授業の教授の言葉は、
すごい!香穂。僕はもうこのクラス内で君に教える事はない。スプリングショーの候補にするけど、いいかな?大学の宣伝にも使われるかもしれなし。それはそれで名誉な事だから。いいだろ?
すごー。
推薦の手続きの為に職員室にいくと、学長に見せる作品や、スプリングショーの候補の作品などの話で教授達は、ごったがえし。マークされてる優秀な生徒の絵というのは、教授達は、
「やっぱりねー」
といいながら余裕で楽しんで見てるそうです。けど、今年の9月に入った香穂は、完全にノーマーク。2つの作品が学長に見せられる事になり。もう一つが、スプリングショーです。教授達が丁度
なに??このKahoって??どうやって読むの?ケホ?なにこれ???聞いた事ない子よねー。誰?
とみんなで話しているところに香穂が教授室にはいると、
あぁ!!!あなたがケホね!!いつ大学に入ったの?
と、質問攻めになり。10名くらいの教授に囲まれたそう。教授達は、それなりにこの世界で名前をあげてる人たち。これは、怖い。娘は、
えっ......と...。ケホじゃなく、香穂です。あのー、手続きが終わったら、帰っていいですか?
と背中に冷や汗が流れるくらい、緊張したそう。私が
えっ!!いい機会だからもっと教授達とはなしてさー。自分を売り込むとかさ。そういうのしないの?
というと、
あのね。私、アニメ専攻なわけ。ビジネス専攻じゃないわけだ。こんなに突然の緊張するシーンで、そんなにすらすら言葉がでたら、絵なんて描いてないさ。絵で描けと言われたら、まだ話せたけど。
ごもっともだ。
それにしても、推薦された絵が日本の夜店や神社の絵というのがとても嬉しかった。無理してでも日本に帰ってよかった。息子が自閉症と重度の喘息で、飛行機に乗れず、日本に行ったのは人生で数回ほど。なので、私の親にも数回しか会えていません。戻った時は、私の親達は、大喜びでした。特に私の父は数回しか会えない孫娘を全力でかわいがってくれました。香穂が「一生買えないかもしれない。」
と思っていた絵を描く用の高いペンのセットを購入してくれたりの大活躍でした。娘は、帰宅するなり、
おじーちゃんには絶対に知らせてね。
と言っていました。会う以外にもおじいちゃんやおばあちゃんへの愛情を伝える方法っていろいろあるなーと思った。
さて、明日から、冬休みの旅行です。いい旅行になりそうだね。よかったねー。