アメリカの社会病理を浮き彫りにさせるアメリカの高校卒業プロジェクト

香穂の学校で、卒業プロジェクトが行われております。
これは、「シニアプロジェクト」というもので、卒業する高校4年生(シニア)が、行います。香穂の履修教科で、シニアプロジェクトが行われた学科は、『経済』『英語』『舞台芸術』の3つの課目です。

『経済』のプロジェクトのお題は
「5年後の自分」
5カ年計画を建てて発表するというものです。

  • 自分の信念をどのように貫き、何を目標に生きてゆくのか?
  • 具体計画は?
  • 自分が行ってゆく努力は?
  • 日々の実行内容は?

等々をパワーポイントは、マックのkeynoteを使って発表します。香穂は、これは結構自信をもってやっておりました。なんせ目標がディズニーのイマジニアの舞台版です。イマジニアとは、ディズニー専門の乗り物等を開発し、ディズニーランドに設置してゆく人たちで、アメリカの子供は、一度は憧れる職業です。香穂は、このイマジニアの舞台版(ショーの舞台を設定する)を目指しています。
なので、このプロジェクトは、香穂にとっては、とてもやりやすいものだった・・はずなのですが、香穂は先日発表の順番が回ってきました。全て発表し、指定された時間内で終わらせてほっとした香穂に経済の先生がなげかけた言葉は・・
「おい、香穂。お前さー。俺がディズニーが死ぬほど嫌いだって知って、このプロジェクトやった?」
っていう言葉だったそうで、香穂は
「あぁぁぁ・・しまった!そうだった。この先生、ディズニー嫌いだったんだ。」

とその時、思い出したそうです。(←遅いよ、香穂)
まっ、他には褒められた部分もあったので、よかったそうです。

私が聞いて最も驚いたのは、
『英語』の課題です。プロジェクトのお題は
「人生で自分に影響を及ぼした3つの出来事」
だそうです。普通に聞いていると、私は日本人的感覚で「有名人に会えた」とか、「オリンピックをみた」とかそう思っていたのですが、どうもアメリカの場合は、違うようです。

プロジェクトの説明が英語の先生からなされました。その説明には、
「親どおしのドメステックバイオレンスや、親からうけた幼児虐待をこのプロジェクトで取り扱う子供は、私は教師なので、ひどいDVや幼児虐待を聞いた場合は、通報義務があります。このケースを取り扱う生徒は、現在もなお暴力が行われている場合は、親が逮捕される場合もあるので、留意して、プロジェクトをすすめるように。
中には、発表中に感極まって話せなくなる生徒も過去にいましたので、自分の持ち時間を考えて、発表するように。」

とのことだったそうです。

親が逮捕されるかもしれない卒業プロジェクトってすごすぎる・・。
香穂は、
「3点のうち2点は、簡単。残り一点は、何にしようかな?」
と悩んでおりました。
1点は、自閉症の渡と一緒に暮らしたこと。2点目は、両親が移民で父が多忙で家にいないために、ほとんど一人で自閉症児を育てて、私を育てた母のポリシー。
と決まったようです。
3点目はなににするか?と悩んでランディバウッシュの最後の授業になったようです。



さて先日から、順番に発表が行われています。
まず一人の男子生徒。
「僕は、産まれてすぐに教会に捨てられました」
と言った所で、もう涙で話せなくなります。彼は、すごく優しい養父、養母に育てられて、今は、幸せだけど、孤児として生きて来た自分の葛藤、養父母の苦労等を述べたそうです。


次に女子生徒
私が祖国から、家族で逃げて出てくるとき、他の友達家族も一緒に逃げてきました。それが軍にみつかり逃げてる最中に友達家族がみんな目の前で射殺されたことです。



すごすぎる・・。こんな話が授業中にでてくるの?ニュースの画面でもなく?という感じです。

香穂いわく、
「この二人は、わりと印象的だったけど、あとは、半分は親の離婚を言うなー。」
っていうことでした。カリフォルニアの離婚率は、60%とも言われています。
ちなみに自閉症児をかかえる夫婦の離婚率は、80%です。


親が離婚したことを話した女の子も
「私の両親は、小さいときは、仲のいい夫婦で、私もこんな夫婦になりたいと思っていました。けど・・」
というところから、言葉が2分くらいでず・・。
お父さんのドメステックバイオレンスが原因で、両親が離婚したそうです。彼女が、しばらく話せなくなったところで、クラスの男の子が
「大丈夫か?」
と声かけして、先生の机から、テッシュの箱2つをつかんで持ってきて渡したところで、(←なぜに2箱もいるのか?)
元気がでて、最後まで話すことができました。
今は、お父さんとお母さんが離婚し、母が、暴力から、解放されたことを嬉しく思う。
そうです。



このプロジェクトから、アメリカの社会病理が見えてくる訳で・・。
すごいな。包み隠さず話すことが多いアメリカでは、こういうことが授業で起こるんだ!
日本の私の高校のクラスだったら、
坂本龍馬の本を読んで、その影響をうけた」
というところかもしれません。


けど、こういうプロジェクトで生徒たちが不利だなと思うのは、なにごとも問題が起らず、つつがなく家庭生活が営まれている家族に産まれた生徒です。


「ちょっとの間でいいから、うちの両親、離婚してくれないかなー。プロジェクトで言うことがないわ。」
という生徒まででてくる始末。仲がいいことを言えばいいんだけどねー。

幸せでつつがなく家庭が運営されることが、子供にとっては、大きな影響なんだけど、それをプロジェクトにするのは、難しいことのようです。

カリフォルニアで暮らしていると一番難しいことは、もしかして
「普通に幸せに暮らすこと」
かもしれないと思う私です。