ホワイトハウスから手紙とオバマ大統領からの表彰状

渡が学校から高校最後の表彰式への招待状を貰いました。このお式は香穂の学校でもあったけど、渡は縁はないなぁ。と思っていたものです。お友達の応援で参加かな?と思っておりました。

香穂がこれをみて、
「いや、渡は表彰される。」
と言うので、
「えっー何で?女の子のナンパ?かわいい子をみつけるのが、だれよりも早いとか?そんな表彰ないよねぇ。なんだろ?」
「そりゃ、行かないとわからさ。」
ということで、香穂と渡の数学の家庭教師でもある開発リーダーをつれて参列。

カフェテリアである会場に到着すると、こんなかわいいケーキやスナックが用意されていました。

さて、何で表彰されるのか?プログラムをみると、やっぱり渡は表彰されるようなお題目はどこにもない。
1番目は、一番大きな賞であるオバマ大統領教育賞
2番目は、学区の賞
3番目は、教育とコミュニティへの貢献賞
4番目、、、、

と続きます。
もしかしたら、手違いで来たのかもしれない表彰式の招待状。だんだん不安になってきた私は、香穂に

ねぇ、何で表彰されるのかな?

と聞くと、冷静なお姉ちゃんは、

それが今から発表されるから、その授与式でここにいる訳で、まだ式始まってないのに、解る訳ないじゃん。

そりゃそうなんだよ。そうなんだけどさー。間違いだったらどうしよう。けど、渡なんて名前は、同じ高校に他にいないだろうし。

さてお式がはじまりました。厳粛な雰囲気の中、国旗が運び込まれます。

学区の偉いさんと校長先生の話が終わり、さて、授与式が始まります。まずは、オバマ大統領教育賞。重い雰囲気の中、校長先生が名前を呼びます。男子学生の名前がよびあげられて、女子、男子のつぎに....。
Wataru Kubo

ありえない!!渡だ。渡が立ち上がって前に行ってる。まちがいない。渡の名前だ!!びっくり。
えっと、、、どうするんだっけ?えっと、あっ。写真、写真と思ったのだけど、びっくりした私は、手が震えてシャッターが切れない。
うまく受け取れるかな?走ってどっかに行ったりしないかな?オロオロするのは私の方。
親の心配をよそに、きちんと自分の名前の前に呼ばれた男の子の後ろに黒のシャツでキメた渡が並んでる。

あっ!表彰賞を受け取ってるよぉーー。
と思った瞬間に、今までの事が走馬灯のように頭の中を走りはじめました。スタンフォード大学病院のヒューレッドパッカード小児科で1歳の時に
「1歳でここに居るっていうことは、どういうことかわかりますか?一生話せないという覚悟をもってこの子を育ててください。」
と言われた日。
毎晩、毎晩、真夜中2時でも3時でも4時でもすくっと起きては、外に飛び出し逃げた日々。近所の家々に水をまき散らし、謝罪に行った日々。我が家は謝罪の時に渡すお詫びの品々でいっぱいなってしまったこともありました。

高校に入ってから、開発リーダーに数学を習うようになり、一気に数学の計算の面白さに目覚めた渡。今年の先生は、宿題が多く、整理整頓がとても大変でした。開発リーダーと、Voice4uを使ってスケジュールや、タスクを作り込み、徹底的な視覚化を行いました。渡は、Voice4uにつくられた宿題のタスクをひとつひとつを丁寧にこなしました。宿題が複雑な為に、タスクは簡単に使えるものにしないと、渡への負担が大きいからです。このおかげで、ついに宿題は1度も忘れませんでした。


さらに、発表や、エキストラポイントの宿題も100%こなしました。あまりに宿題をきちんと提出する渡に、数学のクラスが始まって2週間目から、渡専用の数学の宿題がわたされるようになりました。分厚い宿題がホッチキスで止められて渡され、どんどん難しくなってきました。チャレンジが好きなアメリカらしく。

帰ってきてから、ずっとやっても終わらない時もありました。どうしても解けない問題にぶつかり、夜の10時に開発リーダーのところに行くといいだしたりしました。リーダーに連絡をとって会社で仕事しているリーダーに遅くまで宿題を教えててもらったことも1度や2度ではありません。
難問には、渡の知的障害の壁は、分厚く高く立ちはだかり、どんなに視覚化しても理解できなかったこともありました。その時、渡は、ワンワンと泣き出しました。
私のほうが、もう耐えれなくなり、

渡、私が先生に「ベストを尽くしたけど、できません。」ってメモ書きして渡すからもうやめよう。大丈夫だよ。私が書けば先生もよくやったって言ってくれるから。

といくら説得しても、プライドと負けん気と、できない自分への腹立たしさで、

NO!!

と叫んだまま、泣きながら、絶対に宿題をやめようとしません。気持ちを落ち着かせるためにちょっと歩きたいという渡と2人で、夜中に深呼吸しながら近所を歩いた時には、私の目にも涙がいっぱいになっていて、
「もういいよ。渡は十分がんばったよ。みんな知ってるよ。」
と心で思いながら、その涙を地面に落とさないように、渡に悟られないように、必死でした。落ち着いて戻ってきてむずかしかった宿題を解き終えた時に、両手の拳を高々とあげて

I did it! (僕はやったぜ!)

という笑顔を見たときには、さっきの涙と違った涙が私の頬を伝いました。
こんな渡にも開発リーダーは冷静に対応してくれていました。

渡は、数学が難しくなってくると、ブログのコメントで
「渡くん、がんばれ!」
といわれたことを思い出して、自分でも
「渡、がんばれ!」
と励ましながら解いていました。
常日頃から、友達や会社関係の人たちが
「渡くん、すごいね。」
とほめてくれました。そのたびにうれしかった渡は、
"I like Math!"(数学、好き!)
と答えていました。

最後の1ヶ月は、数学の先生のほうが、渡用の宿題の準備ができなくなり、宿題の束の途中に

渡、このページ以降はするな。これ以降は来週だ!

というメモ書きが張られました。開発リーダーは
「渡君、数学の先生に勝ったんでは?先生が追っ付かないのでは?」
とにっこりしてました。

英語は私にきくと発音がどうしても日本語なまりなのがいやで、周りの人に聞いたりお姉ちゃんに聞いたりで、こちらも宿題を完璧に提出。体育は先生にいわれたとおり、渡なりに毎時間ベストをつくし、プロジェクトもがんばっていたようです。
これらのことを考慮して今回の表彰になった気がします。

皆さんの支えがあってここまでこれた渡です。
いただいた表彰状はこちら。

分厚い紙に、アメリカのエンブレムとオバマ大統領のサインが右下に。

さらに、ホワイトハウスからの手紙。

こんなの初めて見た。

外で、渡に
ホワイトハウスからの手紙を持って写真を撮ろう!」
と言って持たらせたら、ホワイトハウスというので、腰が引けてる。緊張で笑えないらしい。手紙の上にホワイトハウスって入ってるし。

そりゃ、そうだよねぇ。私も触るの緊張するわぁ。

涙ぐむ私に娘もちょっと困ってる模様。なので、私も娘に
「どう思うよ?あなたの弟がすっごい賞、貰っちゃったじゃん!」
という問いに、娘は泣きそうな私の涙を止めるために、

私の弟なんだからさ。これくらいやってもらわないとね!

に、もうみんなで大笑い。なんとか号泣は逃れた私。

応援してくださった皆様。サポートしてくださった皆様!!本当にありがとうございます!!ここまで渡は成長しました。