大学なんて、辞めちまえぇ!
香穂が帰ってきました。
渡は大興奮。朝から笑いが止まらないらしく、それくらいうれしようです。行動もすごく落ち着いています。
さて、香穂は大学の話をする、する、する・・。
実は、香穂がコスチュームデザインの教授の強い推薦の元、この授業を取ることになった今年。学期半ばで、どうもなんとなく元気がなくなって来ている気がした私。
頻繁にメールをやり取るする訳でもなく、電話も滅多にしないのですが、なんとなく・・という感じで、メールしてみました。こういう時の母の勘はあたるらしく・・。
へこんでる、へこんでる・・。
どうもコスチュームデザインの教授から
「あんたの絵はさー。アニメチックなんだよね。ちょっと違うのよ。
あんた、Pepperdineじゃないでしょ。この大学なんて、とっとと辞めちまえぇぇ!A大学にうつりなさい!」
と言われてしまいました。A大学はデイズニーやピクサーとつながりのある大学です。
香穂は今の大学は気に入っています。けど、たしかに自分でも舞台芸術を一生するか?と聞かれたら、
「どうも違うかもなぁ。」
ということが気がついてきている時でした。舞台芸術を専攻して将来、それをしなかったら、どうなるのか?ということです。
なんだか、命綱を切られた気がした香穂。
1週間めそめそとして、どよーーんとしてしまったそうです。
元気がでないと言います。この教授に泣かされる学生も多いこの授業。香穂もその一人になりそうな勢いです。
まぁ、そりゃそうだろう。推薦された教授に
「大学なんて辞めちまぇぇー」
といわれた訳です。
けど、考えているうちに、
その教授には、まったく悪意はないこと、性格がとても母に似ていること。世話好きで思いやり深いことを思い出したそうです。
実は、私は大阪出身で口が悪い。男の子とよく遊んだ幼児期があり、祖父が商売をしていたせいか、祖父似の私は、気の荒いところがあります。
香穂は
「教授は母そっくりなんだ。」
と思い出し、
「あぁ。違う。教授は、この大学をやめて、私が大好きなディズニーやピクサーを狙いなさい。と言っているんだ。」
と気がついた。Pepperdineは、残念なことにDisneyやピクサーとのつながりが弱いのです。
表裏のない教授は何よりも学生のことを考えるのですが、とにかく口が悪い。
けど、根にはもってないので、あぁ。そういうことだ!とわかった香穂。
「母と同じだ。強く子供を支えてくれるんだ。こういう厳しいことを言ったら、言った分、実は言った本人が一番傷つき気をもまないと行けないんだ。はっきりその子のことを思って言う人ほど自分の全身全霊の思いを言葉に込めるので、一番辛いんだ。責任も取らないと行けないし。」
と思い直したそうだ。
「よし!私はPepperdineを卒業してやる!この教授の授業を好成績で終えてやる。
教授の提案よりももっといい結果を出してみる。」
と心に決め、俄然元気になったたようです。Pepeerdineを辞めずに、その次の段階で先生が言う大学にいってもいい訳だ。香穂が思った考えは、一つを止めて一つをとるのではなく、両方とも成功させるということで、それは先生が言ってくれたよりも、もう一段高い目標。
自分が次の階段を登る時。そのときには、教授に自分の言ったことに責任をもってもらい、推薦状を書いてと言えばいいんだ。それが教授が言っていることだ!
と思った香穂。絶対に教授の授業でアニメ調の絵は描かない!と、誓いをたてたそうだ。
立ち直った香穂に与えられた次の授業の課題。
まず本を読まされます。シェークスピアの
「真夏の夜の夢。」
教授から、1inch(2,54cm)X 1inchの生地が何種類も渡されます。
それを画用紙の左上にはります。
さて、登場人物の描写です。教授には、
「妖精がいるから気をつけるように。」
と全員にお達しがでました。
香穂は、すごく考えて、舞台が森なので絵のベースを植物にすることに決定。
妖精に関しては、ものすごく悩んだそうです。
私が最も印象に残った3枚をここに公開。(ちょっと画像が悪いので、色が綺麗にでませんが・・・。)
渡された9枚の生地がはられた左上。
一つ目の絵はこのようになりました。
ディミートリアス(若者)
右上には、イメージの植物が書かれています。
女王タイターニア
頭には、カラーの花、蝶、全身の衣装はすずらんです。背中には、女王の気のきつさを表すように蜘蛛の巣です。
オベロン(妖精王)
この人は花はバラ。ズボンはバラの花びら。肩には王様も気がきついので、蜘蛛の巣のショールがのせられ、イチョウの葉のマントです。背中には、鳥にゆえんのある王様にあった極楽鳥花。
これらは、すごく褒められたそうです。あの思い悩んだ日々から1ヶ月。見事にこの授業での目標は達成したようです。
教授は相変わらずのきつい口調で
「あれだけ妖精に気をつけなさい!と言ったでしょう!」
と生徒に狂ったように怒ったミスは、女王様をすっごく豪華にしてしまった学生が多くいたことだそうです。森の妖精の女王が豪華絢爛な服を着てしまってはいけないそうで・・。香穂の絵を参考にするようにと言われたそうです。教授にも「香穂が教授の気持ちを理解したことが伝わった」のだと思います。
あれだけ叩かれたこの教授の授業、このコスチュームのプロジェクトはA+で突破の香穂。
「私思ったんだ。
本当に心から私のことを思って話してくれたこの教授の言葉は言霊になっているので、心に痛いし、とても落ち込む。さらに教授だってすっごく疲れると思う。けど、本当に心から私のことを考えてくれて、自分の頭で自分の将来を考えなさい。って言っているのだから、絶対に答えよう。って。
コスチュームの授業をとるのは悩んだけど、取ってよかった。私は2年後の自分、3年後の自分のイメージする力もついた。」
よかったねぇ・・。これだけ人の情がわかっただけでも、たいしたもんだ。そうなんだよ。本当にその人のことを思って言う厳しい言葉というのは、重いんだよ。矢のように刺さることがあって当たり前。それから逃げず、さらに高い目標を取った香穂はすごいと思う。たとえ達成できなくても、そのことがわかった香穂はよかったなと思う。
「教授は自分が100%正しいと思っているから、厳しいことを言うんだよ。」
なんていう事を言わなかった香穂は成長したな。高校の頃だったら、この言霊の力のすごさは体験ができなかったと思う。
よかったね。